部屋に戻ると。

当たり前だけれど、布団がちゃんと敷いてあって。

白くてふかふかの、清潔そうな…二対の布団。


普通なら、「うわ~い♪」と布団にダイブするところなんですが…


「……」


入口で見るだけでも、何だか変な雰囲気大有りで。

畳の部屋に、まっさらな布団。

 
な、なんだか…オーラが出てるっ! 布団なのにっ。

 
しかも…

布団同士が近いんですけどっ。

 
仲居さんっ?!

気を利かせてくれたつもりなんでしょうが…

近いというより、ぴったりくっついちゃってるよ…


「…ぷ」


突然、吹き出した流川。

ちょっと…

布団を眺めて笑うのやめてくれる?


「な、なに笑ってんの?」

「いや、あれ」

「あれ?」

「寝てるし」

「え?」


流川の指差す先。

ぱっと見、気づかなかったけど。


「…ぶ。ホントだ。寝てる」


奥の布団が少し盛り上がってるな、と思ったら。


「ちゃんと寝かしてやったんだ、あの仲居さん」


緑の頭を少しだけのぞかせたカエルが、ご丁寧に掛け布団までかけられて寝かされてた。

 
ぷぷぷぷっ。ちょっと和む。


「んーー、よいっしょっと」


言いながら、カエルのいない手前の布団の上に仰向けに寝転がった流川。

 
「さすがに飲みすぎたかな」


浴衣の上からお腹をさすって、ふーっと息を吐く。

 
「やっぱり…飲みすぎたんじゃん」

「ま、これくらいは大したことねーよ」

「でも顔赤いよ、いつもより」

「水」

「は?」

「水をくれ」

「水?」

「冷蔵庫に入ってるだろ、たぶん」


またか。二人きりになるとすぐこれだ。


「あのね…だからそういうのは自分でやりなさいって」

「今、無理」


今…に限ったことじゃないでしょーに。