朝から、侍女達が騒がしい。

 その状況にアリエルは、何かあったのか尋ねる。

「違うわ」

「それなら……」

 侍女仲間から「敬語はいらない」と言われているので、アリエルは砕けた言い方を行う。

 アリエルからの質問に侍女の一人は、仲間の結婚が決まったということを伝える。

 そのことにアリエルは驚くも、いつも世話になっている仲間が幸せになることに、素直に祝福する。

「相手は、港で働いている人」

「確か、28歳よね」

「そうそう」

「かっこよかったよね」

「いいなー、あんな彼氏」

「私も、欲しい」

「で、アリエルは?」

 突然話を振られたことに、アリエルは何も言えなくなってしまう。

 彼氏がいるかと質問されても、知らない世界に来て懸命に頑張っているので、恋愛の方に目を向ける暇がない。

 アリエルは無言で頭を振ると、侍女仲間はどこか残念そうな表情を浮かべながら「可愛いのに」と、評する。

「……可愛い」

「うん。可愛いわよ」

「侍女服も、良く似合っているし」

「私なんて、スタイルを良く見せようとちょっときついサイズを……ダイエット、頑張らないと」

「でも、皆の方が……」

「謙遜しなくていいわよ」

「多分、着慣れているから……」

 そう言いつつ、アリエルは侍女服を眺める。

「そうね。アリエルって……」

「やっぱりアリエルの世界でも、こういう風に女同士で盛り上がっていたの? 特に、恋愛とか?」

 それに対し、アリエルはコクコクと頷く。

 たとえ世界が違っていても、女達が盛り上がる話題には共通点が見られる。

 また彼女が働いていたのは王宮なので、話題には事欠かない。

 そう語るアリエルに仲間達は「いいなー」や「羨まし」と言い、どんな話が面白かったのか聞く。