肌を刺すような寒さによってエイルは、深い眠りから目覚めた。

 今日はいつもと違って肌寒く感じ、布団の中に頭を入れてしまう。

 北国出身のエイルであるが、この寒さは肌に堪える。

 一体、何が起こったのか――

 それを確かめるかのようにゆっくりと布団の中から頭を出すと、部屋の中に視線を走らせる。

 息が白い。

 この現象は冬の季節では当たり前なので、特に反応を示さない。

 その時、ドサっと何か重いものが落ちる音が耳に届く。

 その音にエイルはあることを思い出し、布団の中から抜け出した。

 カーテンを開けた瞬間、眩しい光が差し込む。

 その光に目を細めつつ窓を開くと、目の前に広がる光景を眺めた。

(積もったんだ)

 一面の銀の世界が、目の前に広がっていた。

 先程の音は、木から雪が地面に落ちた音。

 朝の日差しを浴び、雪が眩しく煌く。

 暫くすると目が慣れてきたので、暫し白銀の世界を楽しむ。

 エイルの故郷でも今頃、多くの雪が降り積もり街を白く染めているだろう。

 メルダースがある地域より北に存在するので、今見ている光景より多くの雪を体験できる。

 その反面、冬の時期の暮らしは大変だ。

 何せ、毎年のように大量の雪が降り積もる。

 それも、背丈以上に。

 メルダースに入学してはじめて冬を迎えた時、その暖かさに驚いた。

 周囲の生徒達は「寒い」と叫んでいたが、エイルは首を傾げるだけ。

 此方の冬は、クローディアに比べたら暖かい。

 しかし今日は、寒さに慣れているエイルにとっても寒い。

 こうなると他の生徒達は大変だろう。特に南方出身のラルフは、布団から出られないに違いない。

 エイルは思い浮かべたラルフの姿にクスっと笑うと、制服に着替えはじめる。

 今日は授業がない日。

 それは、今年一年の終わりを祝うパーティーが開かれるからだ。

 食堂には多くの飲み物と食べ物が並べられ、一年が無事に終わったことに感謝する。

 そして来るべき一年がより良い年であるように願い、その時を迎える。

 今日だけは、就寝時間は設けられていない。

 そう、年明けまで遊べるのだ。

 その為、皆は踊りはしゃぐ。

 いつもなら早い時間に起床した生徒の声が聞こえてくるのだが、この寒さになかなか起きることができないのだろう。

 昨年と違って、今日はやけに静かだ。

 それはまるで、雪に全ての音が吸収されたような感じであった。

 エイルは着替えを終えるとタオルを持ち、部屋から出て行く。