ラズベリー



「でも、あんな着飾ったクラスより、このクラスで良かったよ」


「そっか。でもなんで?あっちの方が絶対に楽じゃん!」



最後のエビフライにかぶりつきながら聞いた。



「だって、楽しいし、良い経験出来てるし。例えば……ジャージとか?」



無邪気に笑いながら話す。


「そっかなぁ。ねぇ、あとは?」



今までの笑顔はどこへ行ったのか、いきなり曇った顔に一変した。



「…だって、アイツがいるし」



だんだん怒りが込み上げてきたのだろう。


雷が落ちそうな勢いでジャージをおもいっきり握り締めていた。



「あ、そう」



一番触れてはいけない話題をしてしまったなぁと後から後悔した。


仕方なく、かぶった跡がついているエビフライを残りの半分差し出した。



「…ありがとう」


お礼は言うものの、まだブスッと膨れているからぎこちなく話題を変えようとした。



「……ねぇ、この学校で美怜が東宮だって知っているのは私だけかなぁ?」


「ううん」


エビフライを最後まで口に入れ、頬張っている。


「その人って誰かな?」


恐る恐る聞いてみるが、どうしたらいいか分からなくなっているようだ。


背中に汗がダラダラ滴っている。