ラズベリー



「貴族同士の間で、お前は『生死をさまよう少女』ということになってる」



今日、3度目のフリーズ。


このままぶっ倒れたい。



「名前は公開していないから
大丈夫だよ。安心してね」



お父さんはフォローしようとするが、フォローになっていない。



「私、病気じゃないよ。
ひどいよ」


「美怜、ごめんね」


「ほかにも何か隠してるんでしょ。父の隠し子がいて、姉妹がいるとか」



だから、わざとふざけてみた。


「何でそんなことになるんだ」



さらに追い討ちをかける私。



「実は私、
かなりの悲劇のヒロインとか」


「そんなぁ!!
あなたに愛人がいたなんて…!」



………なぜか、ノリノリで会話に入ってきた母。



「そんな事があるわけないだろう。
確かに少し設定が可哀想だが」


「かなりね」


「わ、悪かったよ」



横にあるティッシュで今度は脂汗を拭き始める。


これが初めて知った大人の事情だった。