「そしたら、たくさん美怜に
媚を売る人も現れるでしょう?」
鼻水をティッシュでかみながら言う。
「……グスン。だから東宮の名前で
入学するのはかなり危険だ」
「事情は分かった。でも『東宮』の名前だったらすぐにバレちゃうよ?」
その通り。
このままだとすぐにバレてしまう。
お父さんとお母さんは2人とも目を合わせていきいきとして言う。
「それも大丈夫」
「そうよ。お母さんの友達のところに仮で戸籍を移動したから」
戸籍を移動。
再び思考回路は停止状態。
「……ええええッ!」
両親は仲良く顔を見合せて微笑んでいた。
美怜はさらに嫌な雰囲気を感じて確かめるように聞いた。
「もしかしてだけど、
もう移動済みとか言わないよね?」
2人は美怜を見て面白おかしく、楽しんでいるかのようにさらに明るい表情だ。
「手続きは完璧よ」
「新しい苗字は『山本』だから」
次々と知らされる衝撃の事実に頭がおかしくなりそうだ。

