「彼女は才色兼備、
文武両道だったと言われてる」
「へぇ」
「誰にでも
頼られる方だったんだ」
「すごい人ですね」
「きっと、
あなたのお母様だろう」
教頭は輝く無邪気な目で訴えてくる。
思わず、後ずさりしてしまった。
「でも、私の母ではないです。そんな人とはかけ離れていますから」
頭に浮かぶお母さんの姿は悪ふざけばかりしているところだけだった。
「そうかい」
「それに母は立派ではないです。まあ一礼の仕方は確かに母に教わりましたが…」
口を濁す。
「そうかい。
君には期待してるよ」
美怜の肩をポンッと叩く。
「まだ、私は未熟者ですよ。
だからこの学園に来たんです」
「アハハハハッ。
口も達者だな」
思わぬ展開に和やかな空気が漂っていた。

