ラズベリー



私は訳が分からず、ただ英理の言うように真似をした。


お母さんに教わった通りに。


傾ける角度や笑顔に気を付けて。


そして、頭をあげた。


なぜだろう、その場の人たちがみんな見てる。


(嘘!?
もしかして間違えた?)



訳が分からず、耳から頬へと紅くなる。


頭にはさっきよりたくさんの『?マーク』が浮かんでいる。



ちょうどその時だった。


香椎 優輝が私の目の前を通り過ぎて行く。


腹が立つほどの憎たらしい作り笑顔。


そして、優輝と目があってしまった。



(……変態野郎!)



その時、優輝はウインクをした。



(久しぶりだね、美怜ちゃん。
すごく好奇心が沸くよ)


(うわぁー。あり得ないわぁ)



すごく悪寒がした。


でも、先輩達は頬を赤らめてキャーキャー騒いでいた。


やかましい程に。


そして、美怜は優輝を強い眼差しで睨み返した。



(気に食わない、
相変わらず変な人)


(面白い奴…)