嘘をついていることが心苦しくて、ムカムカして、飲み込んだオレンジジュースがすごく気持ち悪かった。


「良かったら、
踊りませんか。」


彼が耳元でささやいた。


顔の近さに心臓がバクバクする。


でも、彼が誘ったのは私ではない私。


私は顔を横に振った。


「そう。」


ただそう言いながらも手首を強引に引っ張って会場の中心に連れられた。


「えっ!?
あ、あのー……」


私の言うことなんて全く耳に入っていないようだ。


突然の展開についていけなかった。


皆が私を見ている。


和輝様、陸様、満月様……。


お金持ちの財閥関係者だけではなく、英理や葵、麻衣も見ていた。


お母さんにお父さん、弥生さん。


そして婚約者の雅様。


注目を浴びていた。


その視線が鋭く突き刺さる。


余計に緊張する…。