「突然に変わるなんて、
どうしてですか?」

「和輝様には新しい
婚約者候補が現れたのよ。」

「…誰ですか?」

「『東宮家の1人娘』よ。」

「えっ!?」


それは明らかに私だ。


(私が東宮家って
もしかしてバレてる?)


私が本人だと思って話しているのではないかと思い、肩を強張らせながら聞いていた。


「ちょうど7年前ぐらいに
東宮家に娘がいると
大々的に発表されたの。
同い年ぐらいだったわね。」

「………」

「私『東宮家』に大感謝したわ。」

「……そうですか。」

「ええ。」


いろんな事実が見え始めて頭は真っ白になった。


「すみませんが、失礼します。」


そう言って、バタンと閉めて飛び出した。


「どういうこと?」


遠くへ遠くへ走った。

訳が分からずにまた涙がボロボロと溢れ出してしまった。



その頃、雅は肘をついて大きな溜息をついた。


「私の優輝への思いを
言い過ぎちゃったかしら。」


雅は美怜の正体には気付いてはいなかった。

だが、美怜の心に大きな大きな穴を開けたのは確かだった。



そのあとも何も手が付けられず、どうしていいのかが全く分からずにいた。


(私が和輝様の婚約者…
そして雅様が優輝の婚約者……)


頭の中ではそのことばかりがグルグルと渦巻いていた。