「何かあったら
言ってくださいね。
出来る限りのことは
頑張りますから。」


始めに好印象を持ってもらおうと、満面の笑みで言う。


でも、雅様は一切笑おうとせず冷たい眼をしていた。


「あなた、優輝の
研修中のメイドでしょ。」

「はい。」


声も表情も冷たい。


「仲がすごく良いみたいね。」

「そんなことは…」

「だから忠告しておくわ。」

「え?」

「優輝は私の婚約者なの。」

「えっ?」


自信満々に胸を張っている。


「あら、聞いていない?
これは事実よ。」

「そ、そうなんですか。」

「だから、
あまり甘えないでね。
私の彼だから。」

「…は、はい。」


何故か分からない。


ただ、今まで以上に動揺していた。


(なんでこんなにも
落ち込んでいるんだろう。)


その場所を無理やり逃げた。

本当だろうか、分からない。


でも、正直に聞いてしまうのも怖くて、怖すぎて、どうしようも出来なかった。