ー三年後ー




リディアは17歳の少女になった。


そんな彼女はというと…




「う…ぅ…!
あと、もう少し…!」



…木の枝に跨っていた。

今にも限界を告げそうな枝が、
その身をしならせ悲鳴をあげている。

いくら細身な彼女とはいえ、さすがに
重力には逆らえない。



「ニャ〜ン…」



その枝の先端にいるのは、一匹の小柄な黒猫。


一国の姫として、机に向かい学び事に勤しんでいた筈の彼女が、
何故か今木の上で一匹の猫と向かい合っている。




__この現状に至る数分前の出来事。


彼女がふと窓の外へ視線をやると、
何やら精霊たちがキラキラと忙しく
飛び交っていた。

慌てた様子を不思議に思い窓を開けると…
目の前にある大きな木の枝、その細い足場を一匹の仔猫が渡っていたのだ。

およそ葉の先にとまった蝶を狙っているらしく、小さな黒猫は低姿勢を崩すことなくヒタリヒタリと歩を進める。

しかし、蝶がとまっているのは細い枝の先端であり、いくら身軽な仔猫と言えど枝が折れでもすれば無傷では済まないだろうことは明らかだった。