涼音は大勢いた護衛人を全員片付け、残りは湊とその護衛人・藤馬のみとなった。




「坊ちゃん!お下がりください!」




藤馬は剣を抜き、湊の前に立った。
涼音は敵の剣が落ちているにも関わらず、それを拾おうとはしない。




「…この前は頭に銃を突きつけられて脅えていたくせに、今回はそいつを守るんだな」


「…っ!黙れ、謀反人が!」




藤馬は涼音に剣を振り下ろした。
いざという時に臆病者な藤馬だが彼も涼音と同じ柊家出身、剣の腕前はかなりのものだ。




だが柊家最強の名を持つ涼音の前では、その剣術も通用しない。




藤馬の攻撃を涼音は次々とかわし、終いには掌が傷つくことを恐れずに藤馬の剣を手で握った。
涼音の掌からは血が流れ、その血は手首へ伝った。




「…くそっ!」




藤馬は剣から手を放し、拳で涼音に襲いかかった。




涼音は握っていた剣を投げ捨て、もう片方の手で藤馬の拳を掴んだ。
そしてそのまま藤馬の拳を持って、藤馬を思いっきり遠くの壁へと投げた。




壁は壊れ、藤馬は外へと放り出された。




埃がたつ中から見えた藤馬は頭から血を流し、意識を失っていた。




「……さて、と」




倒れている藤馬を見てから、涼音は体の向きを最後の一人となった敵の方へと向けた。




「あとはお前だけだ、九条院湊」