「わあ。広い!」
20畳位ありそうな湯殿は湯けむりで曇っていた。全体的に女性に合わせた装飾で、色とりどりの石で造られた花で縁取られた浴槽が可愛い。

「ではごゆっくり寛いで下さいませ。着替えはこちらに置いておきますので。」

そう言ってマーサは出ていった。

一人になり、素早く服を脱ぐと、早速湯舟に足を入れてみた。

「気持ちいい!」

身体までしっかり浸かって目をつぶった。

すると花の香りがしてきた。どこから匂うのか嗅いでみると、石の花からだった。

「凄い!この石香るんだ!」

それも色によって匂いが違うので花畑にいるようだ。
(夢の中のお花畑に似てるかも。)

そんな事を考えながらのんびりしていると、だんだん元気が出てきた。

これからどうしよう。

水面に自分の顔が映る。
この姿じゃ帰れない。
何より帰りかたが分からない。

…でも。
……帰りたい。

自然に涙が溢れてきた。
身体を丸くして、暫く泣いた。