あたしは懍香(りんか)。

国立羽間高等専門学校に通ってる二年生の女子学生

中学のときに動物が大好きになって、それからは毎日学校帰りに近くの動植物園に行くようになった

そこが唯一安らげる場所でもあった

ある日のことだった

その動植物園に新しく(狼ゾーン)なるタイリクオオカミの飼育スペースができて、狼が見られるようになった

「ワゥ!」(狼も、犬みたいな鳴き声を出すらしい)

「わああ…」

あたしは初めて生で見る狼に感激した

何匹もいる狼の中に、一匹だけ離れたところにいて、ぷるぷる震えている狼がいた

「…どうしたんだろ」

あたしは餌を手にのせ、その狼のすぐそばに回り、ゲージからその狼に手をさしのべた

「ほら、元気出して」

「…」

狼はなにも鳴かず、静かに餌を食べた

「くすぐったいよ…」

すると狼は、餌を食べ終わると、あたしの手にあるアカギレをなめる

「いたっ…!」

あまりの痛さに手を引っ込める

その後、体に異変が起きた

「…?!」

狼に舐められた手から違和感を感じた

手を見ると、手のひらには黒い毛がはえ、指には肉球がついていた

「な、何よこれ…」

「…!」

今度は体全体が熱くなる

「ウゥウ…ゥ…」

…きっと疲れてるんだ

そう思って帰ろうとした

たが

「ウア゙ア゙ア゙アァアアアアァァアァアア!!!」

全身に強烈な痛みが走り、その場で四つん這いになり、動けなくなった

「イ゙ダイ゙ッイ゙ダイ゙ヨ゙ォオ゙オ゙ォオォォ!!」

体の変化は止まらない

鼻から顎までが犬のように突き出し、手足には爪がはえ、耳は三角になり、頭の上に移動していった

「ガッ…はぁ…ウゥ……」

あたし…どうなっちゃったの…?

立ち上がってみると、背がかなり高くなった気がした

ゲージを見ると、狼達は隅に固まって震えていた

「キャン!キャン!」

…ま、まさか…

急いで公衆トイレへ走る

「な、なに、あの狼の着ぐるみは…」

「やけにリアルね」

周りの人は着ぐるみだと勘違いしている

「…な…なによ…これ…」

鏡の前には、髪を生やし、黒い毛に覆われ、狼の顔をした女が立っていた

よく見たら尻尾もはえていた

(ウソよ…)

今度はケータイのカメラアプリで顔を撮ってみる

何回撮っても狼の顔しか写らなかった

「…いやぁああぁあああぁぁああ!!!」

「どうかしたんですか!?」

女性のスタッフがくる

あたしは必死に助けを求めようとした

「あたし…狼に餌をあげてたら…グガガ」

ここであたしは意識を失った