忘れられた記憶



「どうして?
意味わからない。
私はお前を殺そうとしたのに。
お前の体をのっとろうとしたのに。
なんできた?
なんで私に会いに来た?」

真里香はいつの間にか私の背後にいた。
今回は、私は叫ばなかったよ?
悲鳴もあげなかった。
私は真里香に語りかけた。

「真里香はね、いっつもしっかしてて。
わがままなんていわなかった。
勉強も運動もできて。
フルートもすごく上手で。

そんな真里香がね、初めてこんなわがままいったんだ。
“お前の体をよこせ。人生をかえせ”ってね。
でも、やっぱりごめん。
それはできないよ?
私の人生だから。


私はね、きっと真里香と死にかけた時に、なんとなくわかったんだと思う。
真里香が死ぬことも、私は生きることも。
だから、ショックで記憶をなくした。

でもね、心のどこかは覚えてた。
だから、フルートに愛着がわいたし、カレーが好きだった。
記憶をなくす前の私は、音楽なんて興味なかったし、カレーが大嫌いだったのにね。
フルートが上手で、カレーが大好きだったのは、私じゃなくて、真里香だったんだよね。」


私は泣きながら振り返って、真里香をみた。
血だらけの、変わり果てた真里香を。

「うっうるさい!!!
そんなこといったって、私の人生はかえってこないんだ!!
返せ!返せよ!!」

きっと真里香は苦しんできたよね。
行き場のない怒りを、悲しみを、どうすればいいのかわからなくて。