「おばちゃん、私寝ちゃっていた?」
「うん、ほんの10分くらいだけどねえ。鈴ちゃん、幸福そうな顔してたよ。どんな夢見てたのかねえ。」
おばあちゃんの顔をまじまじと見るけれど、その表情からは真意は伺えなかった。
おばあちゃんは、ゆっくりと腰を上げると、
「そろそろ部屋に入ろう?おばあちゃんは、夕飯の支度をしようかね。」
腰をトントン叩きながら、台所の方へ向かっていってしまう。
「あっ、私も手伝うよ!」
そう言って、玄関から回ろうと立ち上がったけど、おばあちゃんの座っていた場所に落ちている包み紙に目が止まった。
それをそっと手にとると、ほのかに甘い香りが鼻をくすぐる。
これは、桃の匂い…、
…やっぱり、あれは夢なんかじゃない!
「おばあちゃん!」
ドタバタと台所に向かうと、おばあちゃんは割烹着を着て大根を包丁で剥いている最中だった。
「おばあちゃん、おまじない効いたよ!」
ありがとう、そう言うと剥く手そのままにちらっとこちらを見て、見慣れた穏やかな笑みを浮かべたのだった。
──end

