「じゃあ、ハルは私に負担をかけないために別れて、黙って転校したって言うの?」



文香は目に涙を溜めていた。



「分からないけど…多分な」



このタイミングで転校って、それしかないと思うんだけどな



「…それでも私はハルを許せないよ」



文香はとうとうボロボロと涙をこぼし始めた。


「だって…私は離れるからって別れたくなかったもの…」



こぼれた涙を拭うこともせずに、離し続ける文香。



「ハルは…私を裏切ったの」



文香の言葉に息を飲む。



俺はてっきり文香はハル先輩を許して待つんだと思ってた。



自分を嫌ってないなら、嫌われてないなら待つって言うと思ってた。




「ハルのことは忘れる。存在だけじゃなくて思い出も。だから…だから千尋も忘れてね」



俺は文香の言葉に頷くことも否定することもできなかった




「ハルの名前も出さないで。ハルのこと思い出さないで。私もそうする。千尋もそうして?」




俺は文香が涙でぐちゃぐちゃになった顔でそう言ったから、文香がそう言うならって頷いてしまった。



だから今日までハル先輩の名前も存在も思い出さずに無かったことにしてきた。




たしかその日からだったと思う。




文香が色んな男と遊ぶようになったのは