「…二人には幸せになってもらいたい…。伝えあわなきゃ、二人でやってけないよ?」



振り返った文香はそう言って微笑むと




「…どうせ、ここにいるよ」




図書室を指差した…




「…行きなよ。どうせ伝わらないなんて思わないで。どうせ伝わってるなんて思わないで。最後まで…伝えてきてね」




文香は俺の後ろに回ってきた




「早く行きなさいよ。もう、面倒見てやんないわよ?」




少しふざけた文香は




「おわ!」




図書室のドアに向かって俺の背中を押した。






「んじゃ、そーゆーことで。涼泣かせたら半殺しね?」




手を軽く振って、教室の方へと歩いていく文香の姿はとても大人に見えた。



俺なんかよりずっとずっと大人で、俺の前を歩き続けてきた文香。




俺に苦しさも辛さも悲しさも




喜びも嬉しさも楽しさも





全部全部教えてくれた文香。





「…文香!!!!!」



俺は思わず文香を呼び止めた。




不思議そうにこっちを見る文香。





「…ずっと、ずっと!!!好きだった!!!これからハル先輩と幸せになれよ!!!!!!!」



目を見開いた文香はふわっと大好きだった笑顔になって




「ありがとう!千尋!!!あんたも幸せになりなよ?」







もう一度手を振り返して、教室へと戻っていった