「ひっどぉいトモヤ~。さっきまでらぶらぶしてたじゃ~んっ」
ひどく甘ったるい声を出した女が頬を膨らませながら男にくっつく。
「別にヤんのは浮気に含まれねぇだろ?」
当たり前だろ?とでも言いたいような態度で女と話す男。
それって…、その女と?
俺は悔しくて唇を噛み締める。
本当だったら殴りかかりたい。
でも、そんな俺に気付いて俺の腕を震えながら掴んでいる文香の気持ちを考えると動けない。
文香、なにがそんなに怖い?
「…ヤんのが浮気に含まれなかったら、なにが浮気なの?」
俺の後ろで少し鼻で笑ったように言う誰か。
たぶん、出入口付近にいるんだと思う。
「あー、もしかして気持ちとか?だったら残念。お前は文香に付き合った瞬間から浮気されてました~」
そんな言葉にガシャン、と何かが割れる音がした。
「どーゆーことだよ?あぁ?」
後ろで繰り広げられている言い合い。
そっちを見たくても見れないピリピリした雰囲気の中、文香のキレイな声がそばにいた俺にだけ聞こえる。
「…ハル」
ハル?ハル先輩?

