「好きだった」 過去形にしてしまうのは 現在形にすることを彼が許さないから あの時 誰よりも彼を 知っていると感じた 私のなかは 笑みで満ち溢れてた だけれど そんなことなどないんだって 彼の冷酷な目が告げた 穏やかだった彼の目は 一瞬にして獣の目になった そんな彼に私は言う 「好きだった」って 彼は薄く笑い また私を見下ろした 一筋の涙が頬をつたった意味を彼は知らない そしてそんな彼はきっと これからも分かることはない