蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~


恐る恐る麗香の顔を覗き込むと、目が据わっている。


拓郎も大分飲んで居るが、麗香も既に大分飲んで居たようだ。


この女性は酒にはめっぽう強いが、ある一線を越えると人格が変わる。それも、見た目は酔っぱらって居るように見えないので始末に負えない。


「だって、いつもデートに誘うのが自分ばかりじゃ面白くないからって、向こうから誘ってくれるまで会わないで居たら、そのまま何年も音信不通になっちゃうような、薄情な彼氏だから」


一気にそれだけのことを言うと「ねぇ、そう思うでしょ?」と麗香は拓郎のネクタイをむんずと掴んだ。


そのままグイっとネクタイを引かれて、拓郎は思わず「うわっ」と情けない悲鳴を上げる。


フワリと甘い花の香りを身に纏い、麗香は拓郎の鼻先で、ニッコリと小悪魔のような笑みを浮かべた。


間違いない。


これは、完璧に酒量のボーダーラインを超えている。