トントン! 「おはようございます」 ノック音の後に聞こえてきたのは、張りのある中年女性の声だった。 「女の子、いないのぉ? おばあちゃん」 今度は、ハイトーンの小さい子供の声。 「う~ん、芝崎君の話からすると、まだ居るはずだと思うけど……」 芝崎さんの知り合い? ここは彼の部屋なのだから、そう考えるのが妥当だろうと思われた。 ならば、藍が警戒する必要は無いはずだ。 藍はおそるおそる玄関前まで歩み寄り、意を決してドアに手を掛けた。