蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~


体を動かし、上向きになりかけていた気持ちが、また沈み込みそうになったときだ。


ピンポーン。


不意に玄関のチャイムが鳴り響き、藍は、ハッと我に返った。


ピンポーン。


続くチャイム音に、思わず全身の動きが止まる。


――誰? まさか……。


その場に固まったまま、身動きが出来ない。


鼓動がドキドキと跳ね回る。


一瞬、『居留守を使ってしまおうか?』と言う考えが頭をよぎった。


でも、窓は開け放してあるし、玄関自体に鍵を掛けていないので、このまま黙っていてもドアを開けられてしまえば隠れようがない。


ドアを開ければ、遮るものは何もないのだ。


足音を忍ばせて、奥の寝室に逃げ込めば良さそうなものだが、そこまで考えが回らなかった。