――迷惑を掛けたくはない。 そうは思うが、実際問題、他に行く当てなど何処にもないし、正直な気持ちを言えば、藍はここに居たかった。 藍がここに来るまでに声を掛けてきた、妙にギラついた目をした派手な若い男達や、気味の悪い笑顔を浮かべて、やたらと体を触ろうとする酔っぱらいの中年親父。 そして、財布が入った荷物ごと引ったくって行った、バイクの少年二人組。 芝崎拓郎という青年は、彼らとはぜんぜん違う。 信用できる人間だと、藍は、そう感じた。 ――少しなら。 少しの間なら、ここに居ても良いよね?