時が止まった、
いや、戻ったような気がした。
半年前のあの日、藍はこの部屋にやって来た。
半年の間に二人の間で培われたもの。
もしかしたら、その全てが自分の見た夢だったのではないか?
『藍』は『大沼 藍』という女の子は最初からいなかった。
そんな妄想めいた考えが、頭をよぎる。
「馬鹿馬鹿しい!」
そんなことがあるはずない。
淡いイエロートーンのカーテンやコタツがけ。手造りの刺繍入りのクッション。
それは、紛れもなく藍がこの部屋で暮らしていたと言う証(あかし)じゃないか。
心の内に生まれた、モヤモヤとわだかまる恐怖を打ち消すかのように、拓郎は、頭をブルブルと振った。



