夜も十時を回ったころ。
バス・タイムも終わり、コタツでホットココアを飲みながら初めてだというTV放送を、『驚きの連続』で見ていた藍が、こくりこくりと船をこぎだした。
さすがに、疲れたのだろう。
正直、拓郎も疲れていた。
明日は仕事で朝が早いし、もう自分も寝なくては。
「じゃあ、俺はこっちの板の間の方に寝るから、君はこのベッドを使って」
拓郎が、リビングスペース横にある、寝室として使っている六畳の和室に藍を案内して、ベットに寝るように促すと、
「え?」
と、藍が驚いたように、頭一つ分高いところにある拓郎の顔を見上げた。
やっぱり他人の、それも男が使っているベットで寝るのは抵抗があるのだろう。
でも、この家には他に布団類は毛布くらいしか置いていないし、この時間では、おばさんの所に借りに行く訳にもいかない。
まあ、今日の所は我慢して貰うしかない。
「あ、一応、シーツとカバーは換えといたからね」
拓郎が、押入れから薄い毛布一枚を取り出し『んじゃ』とリビングに足を向ると、慌てた様子で藍が走り寄ってきた。
「あの、じゃあ、芝崎さんはどこで寝るんですか?」
――ああ、なんだそっちの心配か。
どうも藍の反応は、拓郎には予想が付かない。



