「……さようなら」 声が震えているように聞こえるのは、寒さのせいだろうか。 そんな事を考えながら、拓郎も「さよなら……」と、別れの言葉を告げる。 藍は、顔を上げてどこかぎこちない笑顔を浮かべると、そのまま一歩、二歩後ずさった。 二人の距離が、ゆっくりと離れていく。 そして藍は、意を決したようにクルっときびすを返して、夜の街へと歩き出した。 離れていく、小さな影。 あまりに華奢なその影は、夜の闇に溶けて消えて行きそうに儚い。