「あの、一つお願いがあるんですけど……」 おずおずと、藍が口を開く。 その瞳が、街灯の明かりを反射してキラキラと輝いた。 「なに? 俺に出来ること?」 「あの……。向日葵畑の写真、頂いてもいいですか?」 「ああ、あれ。気に入ってくれたんだ?」 そう言えば、ずいぶん熱心に見ていたっけ。 『喜んで』と拓郎は、荷物の中から写真を取り出した。 「はい、どうぞ」 「ありがとうございます」 藍は大事そうに、写真を唯一の荷物のサイドバックにしまうと、もう一度深く頭を下げて別れの言葉を告げた。