「今日は、一日お疲れさま。お陰でいい写真が出来そうだよ。ありがとう。こんな時間まで悪かったね」
拓郎のその言葉で、藍の『一日モデル』は終わりを告げた。
結局あの後、大きなカメラの代わりに持ってきたコンパクトカメラで撮影を続たのだ。
小さなカメラは藍を緊張から解き放ち、まずまずの成果が上がった。
何枚かは納得の行く出来になるはずだと、拓郎には自信があった。
今はもうすっかり日も陰り、賑やかだった公園も人影がまばらになっている。
公園の展望台から見える薄闇に浮かぶ港の風景は、夜明け前とも昼間とも違う表情を見せていて、キラキラ輝く町の灯りは満天の星空を思わせた。
二人の吐く息が白い。
かなり気温も下がってきていた。
「お昼までご馳走になってしまって、すみませんでした」
藍が、ぺこりと頭を下げる。
もうこれで、さよならか――。
言いようのない感覚が、拓郎を包む。



