「藍ちゃん、せめて『お兄さん』って呼んであげなさいね。この人はまだ、独身なんだからね」 衣笠がそう言って、コホンと一つ咳払いをする。 「この人は、柏木浩介先生。君達の”新しい先生”だよ」 その言葉に、二人の少女が驚いて顔を見合わせる。 「じゃあ、衣笠先生は!?」 「どこか行っちゃうの!?」 まるで申し合わせたかのように、面白いようにハモる。 「衣笠先生はね、ずっとお休み無しでお仕事していたからね。ちょっとまとめて、お休みを貰う事にしたんだよ――」