蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~


「本当に、どこかお悪いのでは……?」


心配気に尋ねる浩介に『悪戯を咎められた子供』のようなおどけた表情をして見せて、


「お医者様には、隠し事は出来ないねー。ここに、ちょっとタチの悪い出来物があってね」


そう言って、笑いながら自分の胃のあたりを指差した。


昔からこの教授は、こう言うとぼけた所のある人だった。


言ってる内容の深刻さが、そのホワンとしたムードにかき消されそうになる。


「教授!」


慌てて立ち上がろうとした浩介を、右手を軽く振って制して彼は静かに呟いた。


「まぁ、それもあってね、君を呼んだんだよ。出来れば、私の後任としてここの所長を引き受けて貰いたいんだが……」


一研究員として誘われたのだとばかり思っていた浩介は、面を食らってしまう。