山小屋の中は、多少のかび臭さはあるものの、外見からは想像できないくらい綺麗で、生活感があった。
十畳ほどの板張りの部屋には壁際に暖炉が作り付けられていたが、火をおこしたりすれば追っ手に見付かるリスクが大きくなるので、使うことが出来ない。
さすがに電気は引かれてなく、小屋の中も濃い闇に支配されれていた。
雨に濡れた服が肌に張り付いて体温を奪っていく。
そのせいなのか別の原因があるのか、藍の体は小刻みに震えていた。相変わらず足の感覚も可笑しいままだ。
もしかしたら、このまま――。
そんな不吉な考えが、藍の胸を過(よ)ぎった。



