俯いている藍を見やりながら、拓郎がまたもや親父目線でそんな心配をしている、その時だった。
キュルルルッ!!
隠しようのないボリュームの、実にひょうきんな音が、ファミレスの店内に鳴り響いた。
どこかで腹の虫が威勢良く鳴ったのだ。
――俺じゃないぞ。拓郎は思わず、周りを見回す。
「ごっ、こめんなさい!」
頭のてっぺんまで赤くして、藍がさらにうつむく。
――笑っちゃダメだ。ここで笑ってみろ、彼女ポストになっちまうぞ。
拓郎は、こみ上げる笑いの衝動を何とか抑え込んだ。だが、とても成功したとは言えなかった。
藍に気を遣っているのだが、如何せん肩が小刻みに震えているので、笑いを堪えているのが丸分かりなのだ。



