まあ、これは仕方がない。
信用されていないのは悲しいが、さっき会ったばかりの得体の知れない人間に、簡単に自分の住所を明かすようでは、今の世の中危険が多すぎる。
善人の皮を被った悪人など、いくらでもいるのだから。
自分で住所を聞いておきながら少しほっとしている自分に、拓郎は思わず苦笑いをする。
十歳も年が離れていると、父親が娘を見るような気持ちになるのかもしれない。
それにしても、家出なのだろうか?
考えれば妙な話だった。若い女の子が、日の出前の人気のない公園に一人。いったい何の目的があったのか?
導き出される答えは、そんなに多くはない。
「そう言えば、藍ちゃんは、あの公園には観光で来たの?」
さりげなく話題を振ってみる。
「え……、あの、はい、そうです」
言葉に詰まる藍のあまりに分かりやすすぎる反応に、『やっぱり家出かな』と眉根を寄せる。
う~ん。
家出娘に、アルバイトをさせて軍資金を与えても良いものだろうか。



