蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~


「うん、もう……分かったわよ。 助かりました、ありがとうございます! 」


「素直で宜しい。いつもそうだと、先生はとても仕事がしやすくて助かるんだが、お姫様」


柏木は、部下達が見たら10人が10人驚いて口をあんぐりと開けそうな、何とも言えない『ニッコリ』とした笑みを浮かべた。


「私は、いつも素直です」


藍はふくれっ面のままボソリと呟いたが、どうにも分が悪かった。確かに藍自信にも、自分が優等生な患者だという自信はない。


相手は、二十以上も年上の大人の男性で、年齢的に言えば親子程も違う。


十八になったばかりの藍では、太刀打ちが出来る訳はなく、それが又藍には癪に障るのだ。


暫くふくれっ面をしていた藍も、一番肝心なことを話し合わなくてはいけないと分かっていた。多分このまま黙っていても、柏木から話してくれるはずだが藍はそれを待てずに口火を切った。


「……ねえ、先生」


「うん?」


心電図のモニターを見詰めていた柏木は、ゆっくりと視線を藍に向けた。


「お祖父様が言っていたこと、どうするの? あの様子だと、全てが済むまでこのままここで待っていそうな気がするんだけど、お祖父様」


「恐らく、そうだろうね。私も、そう思うよ」


柏木は、同感だと言うように、頷く。