「これは、自分でもけっこう気に入ってるんだ」
写真を見詰める少女の瞳が、素直な賛辞の色を表しているのを見て取り、拓郎はニコニコと取って置きの一枚をテーブルに置いた。
瞬間、少女が、微かに息を呑む音を拓郎は聞いた。
それは、一面の向日葵。
抜けるような夏の青空の下に揺れる、何処までも続く大輪の黄色い花の群れ。
真っ直ぐ『凛』として太陽を見詰めている、強い強い夏の花が纏うのは、溢れんばかりの生命の息吹。
少女は言葉もなく、食い入るようにその写真を見つめている。
――どうやら、興味を持ってくれたようだ。
「それで、モデルの事なんだけど……」
拓郎は、意を決して話を切り出した。
「別に雑誌に載せようとか、そう言うんじゃないんだ」
チラリと、テーブルの上の写真に視線を走らせる。
「見ての通り、俺は風景写真が専門なんだけど……」
視線を少女の瞳に戻すと、そのまま真っ直ぐ見詰めて言葉を続ける。
「でも君を見た時、初めて人物を撮りたいって思った。今、もし撮らなかったら一生後悔するような気がする……」
そこまで言って少し言葉を切ると、自分の言葉を否定するように「ううん」と軽く頭を振った。



