「宜しければ、お孫さんから見た普段のお祖父様の様子などのコメントを頂ければ、有り難いのですが、如何でしょうか?」
「き、君、プライベートな取材は遠慮してくれないか! 非常識だろう!?」
動揺を丸出しで、岡崎秘書があからさまに語気を強める。
「ああ、あの、勿論コメントのみの、電話取材でOKなんですけど……」
逆に拓郎は、気弱そうに語気を弱めて、『困ったな』と言うように突っ立ったまま頭をポリポリ掻いた。
「――孫娘は、生まれつき身体が丈夫じゃないのでね。空気の良いところで療養しておるのだよ。申し訳無いが、それは遠慮させてもらおうかの」
ニコリと浮かべた老人の笑顔には、それ以上の質問を許さぬ堅固な防壁が張り巡らされている。
これ以上は無理か――。
拓郎は、引き際を悟った。
「そうですか。そう言うご事情がおありとは知らずに、余計な事を申してすみません」
頭をペコリと下げて、拓郎はなるべくそう見えるように、ビジネスライクな笑顔を作る。
これは、実際に拓郎がメモに書き留めた事を元に、『本物の記者』が記事を書きビジネス誌に掲載される、あくまで『本物の雑誌の取材』。
決して、それを逸脱してはならない。



