豪華な応接セットに向かい合う形で始まった拓郎の取材は、1時間ほどでほぼ終了した。
日翔源一郎は、拓郎の用意してきた質問に一企業の会長として如才なく答えをよこし、時折垣間見せる、拓郎を値踏みするような鋭い眼光を気にしなければ、雑誌の取材としてはまず成功と言えるだろう。
だが拓郎の目的は、『藍』の居所を突き止める事にある。
探偵を使ってさえ藍の居所が全く掴めないことに拓郎は、かなりの胡散臭さを感じていた。
『もしかしたら藍は、何処かに閉じこめられて居るのではないか?』
そんな妄想めいた考えさ、浮かんでくる。
問題は、話を切り出すタイミング。
恐らく、そのタイミングを誤れば、間違いなく怪しまれてしまうだろう。
そうなれば、唯一の手掛かりを無くす事になる。
話の途切れた所を見計らって、源一郎の傍らにずっと控えていた岡崎と名乗ったカマキリ秘書が、『もう時間だ』と言わんばかりに、腕時計を見る仕草をした。
「では、もうそろそろこの辺で宜しいでしょうか? 次の予定が入っておりますので」
案の定、カマキリ秘書は神経質そうな作り笑いを浮かべて、事実上の取材終了宣言を下した。
――今だ。
話を振るなら、今しかない。



