「初めまして。月刊ビジネスの芝崎と申します。日翔源一郎さんですね?」
拓郎は、どうにか、極上の部類に入る笑顔を浮かべることに成功した。
童顔の少年の様な風貌と相まって、大抵の人間は笑い返してしまいそうなそんな、屈託の無い笑顔。
まあ、内心はかなり心臓バクバクもので、普段拓郎を知るものが見たら、ひきつり気味ではあったが、それでも十分成功したと言えよう。
「私の様な爺の話など、面白いとは思えないがの」
しわがれた、だが生気に溢れた低い声が、室内に響き渡る。
「せっかくビジネス雑誌に載せてくれると言うんじゃから、サービスせんとね」
ふおっふおっふおっ。
老人は、そう言ってくしゃっと相好を崩した。
誰が見ても好々爺である。
近所に歩いていそうな、『人の良さそうなおじいさん』にしか見えない。
だが、
目が笑っていない。
拓郎を値踏みするような鋭いその眼光は、正に経済界のドンのものに違いなかった。



