蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~


再び恭一の事務所に足を運び、藍の居所について調べて貰ったが、現住所以外のデータが一つも出てこない。


「こんな事は初めてですよ。人間が社会生活をしていたら普通は、何らかの痕跡がネット上に必ず残るものです。


学校に通うにしても携帯の契約一つでも、それは全てデータとしてオンライン上に残っているはずなんです。


それが、学校に通った痕跡もなく、病院の通院データ一つ出てこない所を見ると……」


恭一は少し言いにくそうに、秀麗な眉をしかめた。


「彼女はどこか、一般社会とは隔絶された場所に居るのかもしれないですね」


唯一の望みの綱の電脳探偵は、『すみません。僕にはお手上げです』


そう言って、申し訳なさそうに肩をすくめたのだった。


探偵で調べが付かないなら、自分で動くしかない。


藍の身内は祖父の源一郎一人。


拓郎はその源一郎から、取材にかこつけて藍の居所を聞き出すつもりでいた。


正攻法に、『家出中のお嬢さんと同棲していたので会わせて下さい』と言った所で、体よく追い払われるのが良いところだろう。


それぐらいは、拓郎にも予想が付く。