蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~


間違えるはずが無い。これは、『藍』だ。


パーティなのだろうか。豪奢なドレスを身に纏い、大勢の大人達に囲まれて優雅に微笑む少女は、間違いなく藍だった。


「この女性ですか?」


「――はい、間違いないです。彼女です」


画面から目を離さずに、拓郎は小さく頷いた。


再びキーボードが叩かれ、今度は写真の脇に文章が現れる。


『これが、詳細なデータです』と、恭一がパソコンの画面を指さした。


拓郎は飛びつくように、画面に視線を這わせる。


「まあ、名字は偽名でしたけど、彼女、完璧に名前を偽ることはしなかったんですね。それに、家出人捜索願いが出されていたのも幸いしました」


「あなたは、運がいい」と、恭一が口の端を上げる。


「まさか……」


拓郎は、ただ呆然と声を上げた。


確かに浮世離れした所はあった。


どこぞの箱入り娘なのだろうと言う気もしていた。


だが、まさかここまでとは予想できるわけがない。