蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~


コーヒーを優雅な手付きで口に運びながら含み笑うその姿は、どう見ても二十代前半、もしかしたら十代なのかも知れないと思うほど若く見える。


身長は175センチの拓郎とさほど変わらないが、体重は細身の拓郎よりも更に軽そうだ。


男にしては小作りの西洋人形めいた綺麗な顔は、まるで少年のようにも見える。


黒いYシャツに、黒いスラックスと言う黒ずくめの装束も、独特の雰囲気をかもし出していた。


「まあ、藤田さんの紹介なら、断る訳にもいかないですけど。それにしても、あの御仁は相変わらずせっかちですね」


黒真珠のような瞳に怪しい光を揺らしながら、クスクスと、恭一は妙に赤い口の端が上げる。


この際、見てくれがどうだろうと関係ない。この探偵らしからぬ美青年が、人捜しのスペシャリストである、そのことが重要なのだ。


「すみません。宜しくお願いします」


拓郎は、藁にもすがる気持ちで、頭を下げた。