「よし、これでOK。あとは、指輪だな」
内心はともかく表面上は何とか平静を装う事に成功した拓郎に、藍は「ありがとうございます」とニッコリ笑みを浮かべると、今度は「はい」と自分の左手を差し出した。
お姫様は、指輪もはめて欲しいとご所望のようだ。
「はい、はい、姫さま。かしこまりましてございまする」
拓郎は、恭しく一礼をすると、指輪ケースから厳かに指輪を取り出し、藍の左手を手に取る。
白くて華奢な指先から、指輪はまるで以前からそこが己の在るべき場所のように、すっと収まった。
女策士の見立ては間違い無く、指輪のサイズもピッタリだ。
「綺麗……。ダイヤモンドって、こんなに綺麗に光るんですね」
部屋の明かりに照らされた指輪は、キラキラとまるで日の光を浴びた虹の様な、宝石特有の輝きを放っている。
藍は、ダイヤモンド以上に輝くライトブラウンの瞳に喜びの色をたたえて、左手の薬指に収まった指輪を見詰めた。
――指輪にして良かったな。
泣かれた時はどうしようかと思ったが、素直に喜ぶ藍を見て、拓郎は正直ほっと胸を撫で下ろした。



