蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~



何処かの女策士の張り巡らした策略のお陰で、アクセサリー三点セットを手にしたお姫様――。


もとい、大沼藍は、『せっかくだから、ドレス・アップして写真を撮ろう』と言うお抱え写真家の誘いに乗り、ただ今、臨時衣装部屋と化した六畳の寝室でお着替え中だ。


「あの、芝崎さん……」


白いワンピースに着替えた藍が、おずおずと襖から顔を覗かせた。


耳元で揺れるイヤリングの黄水晶が、柔らかい光を放っている。


「どうしたの? こっちの準備はOKだよ」


と、拓郎は、手にしたカメラを掲げて見せた。


「ネックレスの金具が上手くはまらなくて……。お願いしても良いですか?」


「ああ、なんだ。そんなことか。お安いご用だよ」


シンプルな白いワンピースは、色白の藍に良く似合っている。


耳元で揺れる、イヤリングの淡い色彩の黄水晶の石も、肌の白さを引き立たせていた。


「お願いします」


藍は恥ずかしそうに頬を微かに染めながら拓郎の前まで歩み寄ると、ネックレスを手渡してクルリと背中を向ける。そして、色素の薄い長い髪を、右サイドに纏めて胸の方へ垂らした。


細い首筋のラインが露わになり、拓郎は思わず息を呑む。


――うわ、白っ。


普段目に付かない『うなじ』のあまりの白さに、我知らず鼓動が跳ね踊る。


いい年してこれしきでドギマギしていては、立つ瀬がじゃないか。


とは思うが、ドキドキする物は、ドキドキしてしまうのだ。