結局。
色々悩んだ末に拓郎は、一番最初に自分が思い浮かべた『指輪』をプレゼントすることに決めたのだった。
そしていよいよ、今日が本番。
小さなグレーの、指輪ケース――。
テーブルに置かれた『それ』を見つめて、藍は、きょとんとしている。
拓郎は一つ、大きく深呼吸をして話を切り出した。
「ええと、これ、誕生日のプレゼントなんだけど……」
拓郎は、パチンとケースの蓋を開けて藍の方に向ける。
中には小さなダイヤのついたプラチナの指輪が、キラキラと輝いていた。
藍は驚いたように、拓郎とテーブルの上の指輪を交互に見比べている。
単なる誕生祝いのプレゼントなのか、それとも特別な意味があるのか、計りかねている様子だ。
もちろん、特別な意味はある。
でも、それは、言葉にしなければ伝わらない。
「あの、それで、今すぐじゃなくても良いんだけど――」
拓郎は自らを鼓舞するように、大きく深呼吸する。
「藍ちゃんが、そうしてもいいって気持ちになったら、その……」
拓郎は、今まで生きていた中で、一番緊張して一番ドキドキするセリフを口にした。
「いつか、結婚して貰えないだろうか」



