蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~


今を遡ること、数週間前。


拓郎は仕事の帰り、藍の誕生日プレゼントの事を美奈に相談するために、佐藤家を尋ねた。


美奈が一番拓郎と藍をくっつけたがっていたのだから、相談の内容からすれば機嫌が良くなるのも当然なのだが、ニコニコと、実に機嫌の良い笑顔で歓迎してくれた。


「女の子が、彼氏から貰って嬉しい物って言ったら、指輪だね」


「指輪……ですか?」


いつものごとく、佐藤家の広い和室の居間に通された拓郎は、家具調コタツの向こう側で満面の笑みを浮かべる美奈の顔を、まじまじと見詰めた。


いつも思うが、この人のこの自信はいったいどこから来るのだろう?


「そう、ゆ・び・わ♪」


美奈は、自分の左手の薬指にはめているシルバーのマリッジ・リングを『これよ、これ』とばかりに、拓郎の目の前に付きだした。


実は、拓郎も真っ先に指輪を思い描いたのだが、貰った方がどんな風に感じる物なのかが分からず、躊躇した経緯がある。


それで、美奈に相談するに至ったのだ。