多分、時々夢でうなされることと無関係ではないのだろうと、拓郎は思っている。
でもそれはいつか時が満ちて、二人の間の信頼関係が揺るぎないものになったとき、きっと藍から話してくれる筈だと、そう信じてもいた。
そして拓郎は今日、今後の二人の在り方に関わる、ある決心をしていた。
それは少なからず勇気のいることで、最も苦手な部類に属していることだった。
「藍ちゃん。ちょっと、こっちに座って」
心尽くしの手料理を堪能し、二人だけの誕生祝いも一段落した頃、拓郎は、食器の後片付けをしていた藍をコタツに座るよう促した。
緊張で、少し声が少しうわずっていたかもしれない。
「はい? コーヒー、おかわりしますか?」
「あ、いや、コーヒーじゃなくて……その、渡したい物があるんだ。ちょっと、座ってくれる?」
「あ、はい」
濡れた手を拭いながら、藍が不思議そうな面持ちで、拓郎の向かい側に座る。
何だろう? と拓郎の言葉を待つ藍の瞳を、真っ直ぐ見詰める。
――まさかこんなに緊張するとは思わなかった。
要は、『誕生日のプレゼント』を渡すだけなのだが、その中味が問題だった。
――やっぱり、ちょっと先走り過ぎかも。
などと、この期に及んでおよび越しなのは、拓郎がこの手の物を女性に贈った事がないからだ。



