拓郎は、最後の一個になった『たこウインナー』を、まじまじと鑑賞してから満足そうに口に運ぶ藍の様子を、不思議な気持ちで見詰めていた。
最初は、純粋に『被写体』としての興味だった。
それが、『危なっかしくて、放っておけない家出娘』に変わり、いつの間にか今では『掛け替えのない存在』になってしまった。
――まさか、惚れてしまうとは、夢にも思わなかったな。
「芝崎さん? ウインナー食べたかったですか?」
「え? あ、いや」
『ウインナーを食べている方を食べたいです』
って言ったら、どんな顔をするかな。
「芝崎さん?」
どうも、脳みそも春めいて来てしまったらしい。
「コーヒーをもう一杯貰おうかな」
我ながら、アホな事を考えていると苦笑しつつ、藍に紙コップを差し出す。
その視線の端に、藍の傍らに見知らぬ子供が立っているのが見えた。



