蒼いラビリンス~眠り姫に優しいキスを~



「なんて、この前、メグちゃんに教えて貰ったんだけどね」


ネタの出所を暴露して、拓郎が苦笑する。


『メグちゃん』とは、五歳になる美奈の娘の恵のことである。


それこそ、生まれる前から知っているので、拓郎にとっては実の姪のような存在で、恵の方でも『拓にーちゃん』と拓郎の事を慕ってくれている。


藍の事も一目見た瞬間に気に入ったらしく、すぐに仲良しになってしまった。


拓郎を通しての極限られた人間関係しか持っていない藍にとっても、心を許せる数少ない人間の一人だ。


「私はこの前、恵ちゃんに『パンダの尻尾の色』を教わったんですけど、芝崎さん、知ってますかパンダの尻尾の色」


藍が、その時の事を思い出したのか、楽しそうにクスクス笑いを漏らした。


――藍が動物園に行きたいモードになったのは、美奈の画策の結果ではなく、娘の恵のお陰のようだ。


なら、例の爆弾発言は無さそうだな。


と、拓郎は、少しほっとした。